山田ズーニーさんの表現講座で書く力に可能性を感じた

山田ズーニーさんの「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」第14期を受講した。

受講したと言うと講師の方の説明をひたすら聞くイメージがあるのだけど、 実際は聞くのが2割、実際にやってみるのが8割で、とにかくアウトプットすることに時間が割かれていた。

講座は全3回で構成され、各4時間ある。 映画を2本ぶっとうしで見るくらいの長さがあるけど、振り返ればあっという間だった。 むしろ、全然時間が足らないと焦ったくらいだ。

定員は24名。全く接点のなかったであろう様々な背景を持つ人たちが、言葉の力を信じて集まった。 もしかすると、もっと切実で、言葉にすがりたい気持ちだったのかもしれない。 わたしはそうだった。

自分の思いがわからない。やりたいことって何だ。 わたしも御多分にもれず、現代病ともいえる、やりたいこと探し病にかかっている。 就職活動で一度は自分のやりたことってなんだろうと考えたかと思うが、社会人になったって同じだ。 転職することがめずらしいことではなくなり、考える機会はこれからもなくならない。

自分のやりたいことなのだから、どんなに仲のよい友達でも聞くわけにはいかないし、家族も教えてくれない。 尊敬する師とあがめるような人でさえ、答えを返してくれることはない。 他の誰かに決してまかせることができないこと、それが考えることだ。

考える方法として言葉があり、言葉を使って問いにする。そうして、その問いに一つずつ答えを出していく。 では、がむしゃらに問いを立てていけばいいのだろうか。

「自分は何をしているときに楽しいと感じるか?」 「自分が今まで思わず続けてしまったことはなにか?」 「自分が...」

自分のやりたいことを探すのだから、「自分は(が)」という問いをたてていけばいいように思うが、 そうではないのが面白い。 時間を「今」「過去」にずらし、空間を「身の回り」「日本社会」「世界」へと広げる。 自分のことを知りたくて内に内に目を向けるのではなく、実は他者のことまで考えないと自分が見えてこない。 そうした自分になかった問いの立て方を学べる講座だった。

さて、問いの立て方を学べたのはたしかに収穫であったが、それ以上に心を揺さぶられたのは、同じ受講者のみなさんの発表だった。講座はズーニーさんから導入の説明があり、その後はインタビュー形式で受講者同士が2人1組で向かい合って問い続けていく。問いの文章はあらかじめ用意されている。それを使って問う人と答える人にわかれてインタビューをする。インタビューが終われば、問うていた人は答える人に、答えていた人は問う人に役割を代え、お互いが問いに答えられるようになっている。 そうやって考えを深めていき、最後に、問いを掘り下げた結果を文章にして、みなさんの前で発表する。

発表のルールは2つ。一切前置きしないこと、そして文章に書いたこと以外は言わないこと。 この緊張感というのはすさまじかった。正直、2回目、3回目の講座前に休んでしまおうか...と頭によぎったくらいだ。だけど、もし受講しようか迷っている方がいるなら、安心してほしい。誰も決してあなたを批判しない。

自分に真剣に向き合ったであろう文章は、なぜだろう、グッとこみあげるものがあった。 文章の上手い下手ではない。時間内に文章に落とし込めないことだってある。 それなのに、響く。 なんでなのか、うまく説明できない。 受講者全員の真剣に聞く姿勢、教室の静けさ、発表者の顔のこわばり、声、そして文章を書いた紙を持つ手の震え。そうした全てのものが混ざってできた感情なのだと思う。

「あなたには書く力がある。」

この言葉を心の底から感じさせてくれる体験だった。 誰もが書く力をもっている。 そう感じさせてくれたみなさま、ありがとう。